メとハ

雑感から世界をつくる試み

スタンド・バイ・ミー ロブ・ライナー

良い物語は、完結しない。

4人が奇跡的に共有した2日間は、
あくまで長い人生の一部であって、
僕達はそれをたった2時間、垣間見るだけだ。

でもその2時間、スクリーンの中で確かに4人は生きていたし、
4人のそれまでの人生とその先の人生は、スクリーンに映らないところで
確かに存在している。


ひとの人生は些細で断片的な物語の連続で、
その1つ1つは綺麗に幕を閉じることなく、
輪唱のように連なっていく。

どんなにドラマチックで長大なエピソードも、
地味な選択の積み重ねで作られているし、

ひとの人生は、どの瞬間を切り取っても、そのひとの人生だ。


であるならば、良い物語とは?
たった2時間で、その人生のすべてを想像できる。
想像した人生のすべてから、2時間を捉え返せる。


そして、この人生と物語の関係は、
映画の2時間と各シーンの関係にも、類比して同じことが言える。
2時間のうちどの瞬間も、その2時間を代表している。
2時間を見た後に、1つ1つの瞬間が思い返される。

そんな映画こそ良い映画だという、
当たり前なことに改めて気づく。

あらゆる映像が、
表現手法・メッセージ・構造の3要素で成り立っていると仮定すると、
普遍的な構造を備えていることは、いちばん分かりやすい名作の条件だ。
表現手法は次々と現れてくるし、
メッセージは更新され続けるものだから。

 

 

そしてこの映画のメッセージは、
「一は全、全は一」という普遍的な構造そのものだ。

一瞬の青春時代のきらめきは、それだけで人生を語るに値する。
どんなに素晴らしい人生も、1つ1つの出会いと別れの連続でしかない。

永遠に一緒にいられないことは分かっている。
人と人は、最後は必ず別れるのだ。
でもその上で、「そばにいて」と歌い上げることは、
決して無邪気で無鉄砲な「青春の1ページ」として片付けられるものではない。

その一言には、
そんなことを言える友がいるという嬉しさと誇り、
その一瞬を大事に抱えながら生きていくのだという覚悟が込められている。

"Just as long as you stand, stand by me"
きみがそばにいてくれるなら、

人は、生きていける。